トラクターのリンク機構と作業機のヒッチの組み合わせ解説

トラクターは作業機を取り付けることで様々な作業に対応することができます。しかし、新たに作業機を購入するとき、トラクターと作業機のメーカーさえ合わせておけばいいかというと、そうではありません。

トラクターのリンク機構と作業機のヒッチによって、適合するかしないかが変わります。

この記事では、作業機を購入する際に知っておくべき、トラクターのリンク機構と作業機のヒッチの種類、ヒッチの見極め方などを解説します。

新たに作業機の購入を考えている方は、ぜひ参考にしてください。

トラクター側のリンク機構の種類

トラクターには、作業機を取り付けるための機構が存在しており、それをトラクター側はリンク機構、作業機側はヒッチと呼びます。

主なリンク機構は以下の3点です。

  • 標準3点リンク機構
  • 特殊3点リンク機構
  • 2点リンク機構

リンク機構の3点リンク機構には、上部にトップリンク、左右にロアリンクと呼ばれるリンクアームの3点がついています。2点リンク機構には、トップリンクがついていません。

それぞれ詳しく解説いたします。

標準3点リンク機構(標準3P)

標準3点リンク機構の特徴は、トップリンクの長さ40〜50cmになっていて、特殊3点リンク機構と違って中折れしていません。標準3Pと呼ばれることが多いです。

各メーカーの独自機構が存在している中、規格を統一させています。そのため、トラクターで最も一般的に使用されています。

標準3点リンクには、国際的な基準で分類されています。大まかにはサイズで分けられています。

分類サイズ
Category:0小型
Category:1中型
Category:2大型
Category:3さらに大型

このように標準3点リンク機構であれば、すべての作業機が適合するわけではありませんので、注意が必要です。

ニプロ松山や小橋、ササキのロータリーを利用する場合は、標準3点リンク機構になることが多いです。

特殊3点リンク機構(特殊3P、特3P)

特殊3点リンク機構は、トップリンクが中折れしているため短いです。その短いトップリンクと三角金具からできています。特殊3Pや特3Pと呼ばれます。

特殊3点リンク機構は、イセキやクボタ、ヤンマーなどのメーカー純正の作業機に採用されていて、標準3点リンク機構では対応できなかった作業などに対応していることが多いです。

具体的な機能は以下の通りです。

機能機能の内容
クイックヒッチ式作業機の取り外しを簡単にするための機構。
調整できる上部リンク作業の角度や高さを調整できる上部リンク。
テレスコピックアーム作業範囲を広げる長さ調整可能なアーム。
ダブルヒッチトラクターによってはフロントとリアの両方にリンク機構がある。
重量負荷調整機構軽量農機具の安全性を高める機構。

※以上の具体的な機能は、すべての特殊3点リンク機構についているわけではありませんので、ご注意ください。

2点リンク機構

2点リンク機構は、トップリンクがなく、作業機の左右2点を支える機構です。20馬力未満の小型トラクターや、旧型機に採用されています。

2点で支えていることもあり、高度な制御を行うことは難しく、単純作業に利用されます。

取り外し自体は比較的簡単ですが、メーカー指定外の作業機の取り付けは難しいです。

作業機側のヒッチの種類

続いては作業機側のヒッチについて解説します。今回は以下のクイックヒッチ(オートヒッチ・ワンタッチヒッチ)の5種類について紹介します。

  • 日農工A-1ヒッチ(特殊3Pリンク機構用) 
  • 日農工A−2ヒッチ(特殊3Pリンク機構用)
  • 日農工Bヒッチ(特殊3Pリンク機構用)
  • 日農工Sヒッチ(標準3Pリンク機構用)
  • 日農工Lヒッチ(標準3Pリンク機構用)

日農工とは、一般社団法人日本農業機械工業会の略で、ヒッチの標準規格を示した団体です。

A-1、A-2、B型は、特殊3点リンク機構で多く採用されています。S、L型は標準3点リンク機構で多く採用されています。

日農工A-1ヒッチ(特殊3Pリンク用機構) 

日農工A-1ヒッチは、主に40馬力以下のイセキや一部のクボタ純正ロータリーに採用されているものです。主に小型トラクターに使用されているため、軽量な作業機に適しています。

15馬力から30馬力程度のトラクターに適していると言われ、プラウやロータリー、モアなどに対応します。

主に採用されているメーカーと型番は以下の通りです。

メーカー型番
イセキTU197~257、TA207~247、TA267~317、TA337~467TF、TH、THS、TK、TG、TGS、AT、NT、NTA全型式など。
クボタGB16〜20、,GB160〜200、KB16〜20など。

日農工A−2ヒッチ(特殊3Pリンク用機構)

日農工A−2ヒッチは、A−1ヒッチよりも大きめのトラクターや作業機に対応しており、主に中型トラクターの規格です。主に33馬力以下のヤンマーや三菱純正ロータリーに採用されます。

30馬力から50馬力程度のトラクターに適していると言われ、大型のプラウやロータリーなどの重量のあるものに対応します。

主に採用されているメーカーと型番は以下の通りです。

メーカー型番
ヤンマーAF 33馬力以下、RS全型式、US261~361、US324~334、F190~250、AC16~21、CT118、CT122、CT250、CT280、EF116~328。
三菱マヒンドラMT160~240、MT161~241、MTZ、GS、GSK。

※ヤンマーのAF330RとAF330JR、CT340に関しては、Sヒッチの場合もありますので、ご注意ください。

日農工Bヒッチ(特殊3Pリンク用機構)

日農工Bヒッチは、A−2ヒッチよりも大きなトラクターに対応している規格です。主に50馬力以上の大型トラクターに適しています。主にクボタの大型トラクターにあいます。

メーカー型番
クボタGL19~467 全型式、GT19~30、KL21~50、KL210~550 全型式、L27~46、270D~330D、T22、22E、T200〜240、KT20~30、KT210~300、Bb260。

※GT19~23,T22、24、T200、220、KT20〜24に関しては、取り付け可能ですが、作業機の角度が違いますので、注意が必要です。

パワクロのGT19~23、T22、T24、T200、T220、KT20〜24はBヒッチに対応します。

日農工Sヒッチ(標準3Pリンク用機構)

日農工Sヒッチは、クボタのW3PヒッチやヤンマーのSヒッチなどに対応しています。下部の2つの接点が40mmの大きさで、カラーを外すと28mmの軸になっていて、どちらにも対応します。

メーカー型番
クボタKL用Wヒッチ、GM49~73、MZ50~750。
イセキTG37~46、TG353~553、TGS37~46、TK37~46、AT37~46。
ヤンマーMT160~240、MT161~241、MTZ、GS、GSK。

日農工Lヒッチ(標準3Pリンク用機構)

日農工Lヒッチは、大型のトラクターと作業機に対応した規格です。作業機のメーカーは、ニプロ松山や小橋、ササキの50馬力以上のトラクターに採用されてます。

トラクターのリンク機構を強化して高機能化したヒッチ規格で重量のある作業機に対応しています。

ここから先は注意点について説明します。

3点直装と注意点

3点直装とは、ヒッチの三角金具を使わずに直接ついているものです。費用は安いですが、作業機メーカーの作業機を使用する場合は、ヒッチやリンク機構の組み換えが大変になります。

旧型ヒッチと2P装着には統一規格がない

日農工の統一規格が作られる前は、メーカー各社ごとにヒッチを作成しており、旧型のヒッチと2P装着については、統一規格がありません。

ここでは旧型ヒッチと2P装着の対応方法を紹介します。

旧型ヒッチについて

旧型のヒッチと対応型番は以下の通りです。

ヒッチ種類対応型番
クボタL1専用L1-18〜32、L1-185〜325専用。ロアーリンクだけをバーで結んでいるもの。
クボタnewL1-5専用(BR)AフレームL1−195〜315の奇数馬力専用。
クボタサターン専用AフレームX-20、X-24、GT3、GT5、GT8専用
イセキオプション3角クイックヒッチイセキTAシリーズ
ヤンマーCヒッチFX285、FX305、FX335、FX435でロータリー末尾番号が02(BR)、FX26~46。
ヤンマーBヒッチF5、F6、F7、F(X)16〜30、F(X)195〜265、F145〜175、F180〜200、FX215M〜265M(BR)、FF205〜245。
三菱スーパーヒッチF2MT21〜26(BR)、MTX28。
三菱スーパーヒッチF3MT27、MT30、MT33。
作業機メーカーヒッチ(ニプロ松山)さまざまなメーカーのトラクターで使用されている。※1
作業機メーカーヒッチ(小橋)さまざまなメーカーのトラクターで使用されている。※1

※1必ずしも全てのトラクターに適合するわけではありません。必ず確認をしてください。

2P装着について

2P装着は基本的には各メーカー、各型式の純正ロータリーしか使用できません。

同じメーカー同士であれば装着できる作業機もありますが、クローラータイプの場合は同じメーカー同士でも遭わないことがあります。理由としてはヒッチとジョイントの高さがホイールタイプと違うからです。ホイールタイプのトラクターから取った作業機をクローラータイプのトラクターに付けようとすると合わないことが多々あります。

メーカー対応型式
クボタGB13/14/15、A13/14、B52/72、KJ11GB110/130/140/150/170、GB115/135/145/155/175JB11/13/14/16/18
GB14PC(GB14PC2PHC10に統合)
GB14PC/130PC/140PC/150PC/170PCGB145PC/155PC/175PC
B1-14/15、B1402/1502、B1400/1500、B7001、B40
B1-16/17、B1702/1902、B1600
L-1501
A30
ヤンマーF13/14/15/16YM1502/1602、YM1301/1401/1501
Ke1/1D/2D、Ke2/3/4、Ke30/40/50/60Ke14/16/18、F145/155/165
シバウラP15(F)/17(F)、SP1540/1740、SP1500/1700
P145/155
S313/315
イセキTM150/170、TM16/18
TC11/13
TPC15/TPC153
TM150/170(TM16-2phc10に統合)
TM15/17、TF3/5TU127/137/147/157/167/177TU125/135/145/155/165/175TU120/130/140/150/160/170TU1400/1500/1600TX145/155、TX1210/1410/1510、TX1500
ミツビシMT14/15/16、MTX13/15MT1401/1601、D1450/1550、MTE1800
MT136/146/156,MT135/155
MMT14/15/16/17、GF14/15/16/17
ヒタチC142/172、C144/174、E14/15、E152
CX130/140/150,CX13/14、CXT117/137/147/157/177
ホンダマイティ130D
TX130/140/150、GTX130/140/150TX115/135/155/175

ヒッチを見極める方法

ヒッチがA1、A2、B,L、Sか見極める方法は以下の3つです。

  1. ロアピンの幅とPTO軸との並び方
  2. PTO溝までの長さ
  3. SヒッチとLヒッチの長さ

それぞれ解説します。

ロアピンの幅とPTO軸との並び方

ロアピンは、ロアリンクに使われるピンのことです。

このロアピンとPTO軸が一直線上に並んでいるのがA1、A2,Bヒッチになります。PTO軸とずれている場合はS、Lヒッチです。

またロアピンの幅がA1、A2だと465mmとなっていて、Bは565mmとなっています。

このようにロアピンの幅とPTO軸との並び方で判断が行えます。

PTO溝までの長さ

PTO溝までの長さでもヒッチを見極められます。PTO軸までの長さは、作業機からでているPTO軸の根本から入っている部分までの長さです。

A1、BヒッチはPTO溝までの長さが100mmとなっていて、A2ヒッチは50mmとなっています。

SヒッチとLヒッチの長さ

SヒッチとLヒッチの違いは、トップピンとPTO軸までの長さで決まります。310mmであればSヒッチ、それ以外はLヒッチです。

簡単なヒッチの見極め方を紹介しましたが、所有している作業機の取り扱い説明書などをみて確認するのが間違いありません。

農機具店に適合可否を確認するポイント

ここまでリンク構造やヒッチの種類について解説してきましたが、新たにトラクターや作業機を購入する際、プロである農機具店に適合可否を確認するのが大事です。

農機具店に適合可否を確認するために、必ず抑えておくべきことは以下の2点です。

  • トラクターのメーカーと型式
  • 作業機のメーカーと型式

現在使っているトラクターと作業機のメーカーと型式が必要です。トラクターと作業機を両方違うメーカーで購入する場合にも、購入したいトラクターと作業機のメーカーと型式があれば、適合可否を確認することができます。

片方のメーカーや型式だけでは、農機具店も判断できませんので、ご注意ください。

ヒッチは農機具店に確認しよう!

この記事では、リンク構造とヒッチの種類、ヒッチの見極め方などを解説しました。トラクターや作業機を新たに購入するときに、必要不可欠な知識となりますので、改めてご確認ください。

ご自身で判断できるようになっても、ヒッチが適合するかは、農機具店などの有識者に確認するのが無難です。不安な場合は、必ず農機具店に確認しましょう。 

  • 投稿日
  • 著者 農機具王 編集部
  • カテゴリー トラクター

農機具王 編集部